インタビュー 沢村 森田良太統括シェフ

シブヤ大学のイベントの際に、広尾にある沢村の統括シェフである森田良太さんにお話をうかがう機会があった。料理人としてスタートしてその後にパン職人への道を選んだ森田さんのパンにたいする思いを聞かせていただいた。

 

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料理人からのパンの世界へ

- どちらで修行されてきたのでしょうか?

「もともとは料理人になろうとおもっていて、専門学校出て横浜中華街で中華料理の料理人をやってたんです。その時からパンも好きでパン屋めぐりをしていたんですけどそのうちだんだんパンを作る方の興味が大きくなって。

それで中華料理屋を辞めて、当時横浜のホリデイ・インというホテルに今のブラフベーカリーを立ち上げた栄徳シェフがいらっしゃって、最初はそこに入ってパン職人としてスタートしました。

その後に志賀さん(現シニフィアン・シニフィエのオーナーシェフ)のいた赤坂のペルティエに入りたくてユーハイムに入ったんですけど、お店の方は順番待ちなので工場の方でやっていて。

でも希望人数も多くてなかなか順番が回ってこないんですよね。それで1年半ぐらいやってたんですけど、自分は他のお店に移ろうと。

ちょうど新横浜にシャンドブレっていうパン屋さんを立ち上げるという話があってそこのオープンスタッフとして入ってシェフをやりました。そこでしばらくやってるうちに今の社長から声かけられてサワムラに移って2009年に軽井沢で最初の店をを立ち上げて今に至ってますね。」

 

- 料理人からパン職人へという経歴は、たとえばル・プチメックオーナーシェフの西山逸成さんもそうだと思うんですけど、人数としてよくあるパターンなんでしょうか。

「そうですね、結構多いんじゃないかと思いますよ。西山さんもずーっとフランス料理やっていて、料理を学ぶつもりでフランスにいったんだけどそこでパンにひかれてっていうことのようですよね。料理からパンへっていう流れは多いと思います。逆にパンから料理というのは聞いたことがないですね。」

 

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料理は作るもの、でもパンは育てるもの

- どうして料理からパンへという流れが生まれるんでしょう? どこにひかれるんですかね。

「そういわれればなんなんでしょうね。最初はパンが好きでっていうところがあって、パンってアレンジがいろいろ効くんですよ。甘かったり、しょっぱかったり・・・・いろいろなアイディアが立てやすいんですよね。

作り甲斐がすごくあるんですよ。実際にやってみるとわかるんですけど、料理とパンって全然違うものなんですよ、同じ食べ物でも。料理とお菓子とは似たようなところが有ったりするんですけど、パンと料理は全然違う。」

 

- そうなんですか、それは少し意外な感じがしますね。むしろパンとお菓子が近いような気がするんですが。

「パンは菌が相手だから、育てていかないといけないんですよ。極端なこというと調理人はお菓子はつくれてもちゃんとしたパンは作れないんじゃないかと思うんです。

味を足すとか火加減どうするとかそういうことよりも、温度管理をどうするとか焼きあがるまでの良い環境をどうやって保ってあげるかというところがパン作りの仕事そのものなんですよ。それに気づいてからはどんどんのめり込んでいった感じですね。」

 

- こういう風に作りたいんだけどなかなかその通りに作れないという。

「どちらかというとパンについては作るという感覚ではないんですよね。パンは育てるという感じです。温度とか湿度だとかがちょっと違っただけでも全然違うものになってしまったりします。

やっぱり子供育てるのと一緒のような気がしますね。ある程度よい管理をしてあげるといいパンができてくるという。それに途中で味見ができないじゃないですか。最後に出来上がるまでどんな味なのかわからない。」

 

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バゲットが腕の見せどころ

- 森田さんにとってバゲットってどんな意味を持つパンなんですか。

「パン屋めぐりをしていて、志賀さんのバゲット食べて衝撃を受けてこの製法を教わりたいなと思ってユーハイムに入って。そこで出会ったのが今の作り方に通じる長時間発酵で、そのやり方をやってるうちに、これが一番粉のうま味を引き出せるやり方だと。

シンプルなパンほど個性が出しづらかったりするんですけど、そんな中ですごく個性が出せる製法だなと。シンプルなパンって一番食べていてい飽きがこないじゃないですか。

そういう毎日食べても飽きの来ない、毎日の生活の中にある日常的なパンを目指して作っています。」

 

- 他のパンと比べて何が一番違うんでしょう

「バゲットがそのお店の腕の見せ所だと思います。どんなにカレーパンがおしいとかクリームパンがおいしいといわれるよりバゲットがおいしいといわれる方がうれしいです。一番シンプルで材料も少ないしその制約の中でどれだけ自分を表現できるのかというのバゲットだと思ってます。」

 

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- サワムラのバゲットの製法の特徴として、老麺をつくっているというところがあるとお聞きしましたけど。でもいわゆる一般でいうところの老麺法とは少し違うんですよね。

「ふつうは少しフランスパンを多めにに仕込んでおいて余ったやつを次の朝に老麺として利用するんですけど、うちは老麺は老麺として当日に仕込むやり方をとっています。

前日のを使うとどうしても酸味が出てきちゃうんですよね、発酵がかなり進んじゃってたりするので。」

 

- なるほど、そもそも老麺を利用しようとした理由って何なんですか。

「イーストの量を抑えていくと、仕込みの量がよほど多くないとイーストの絶対量が少なくなりすぎて安定性がなくなるというか、同じ量でも結果が違いすぎて実用的でなくなってくるんですよ。

それでイーストの量をおさえて安定した品質を確保するのは老麺がいいということで使用してます。

フランスでイーストの利用量がこれ以下の場合は天然酵母とうたってもよい、という基準があるんですが、うちは完全にその基準以下の量でやっています。老麺にしてるんでイーストとしてはほんとに少ないんですよ。

それと捏ね上げ温度も、ホイロも低く抑えてます。季節にもよりますけど18度くらいとか。発酵を抑えるというか、熟成に近い感じかもしれませんね。」

 

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子供にバゲットを食べてもらいたい

- こんなに工夫されていて、ボリュームもあってその割に値段の安いバゲットってもっと評価されていいと思うんですけど。

「食べ方とかがまだ知られていないというか。

たとえば向こうの人は料理とお合わせて日本のご飯のような感覚で食べる。でも日本の方はパンはそのまま食べるじゃないですか。菓子パンとか惣菜パンとかそのまま食べておいしくて、食事として完成形でないとなかなか手がでないというところがあると思います。

角食とかパンドミはまだトーストして食べるというスタイルが浸透しているのでそれなりに食べられているんですけど、バゲットとなるとまだまだどう食べるかというイメージがわきづらいんじゃないですかね。」

 

- 硬いっていうイメージもありますしねぇ。実際硬いんですけど。でも硬いからこそ噛めば噛むほど味が出るみたいなところがあって、そこがすごく食べ物としても魅力的だと思うんですけど、なかなかそうは理解されていないような気がします。

「時々『子供に食べさせたいので柔らかいパンありませんか』っていうお客さんがいるんですけど、子供にこそバゲットを食べさせてほしいと思うんですよね。

僕の甥っ子で小さいころからフランスパンばかり食べている子がいて、一度食べてみた後に自分でこれがいいって選んで食べてたらしいんですけど、いまでもフランスパンが大好きなんですよ。子供だからといって柔らかいパンがいいとは限らないというか、積極的に食べさせてみる機会があってもいいんじゃないかと思うんですよ。」

 

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-  なるほど!「子供にフランスパンを食べてもらう会」みたいなのをやってみるのも面白いかもしれませんね。

「そうですね、5歳くらいまでの間に食べてもらっておいしさを体感してもらうと全然違うと思うんですよね。子供が来たら小さなおもちゃとかおまけでつけて。そういうことができればバゲットの食べ方も広がっていくと思うんですよね。最初は赤字になっちゃうけど(笑)。」

 

- 子供がバゲットを体感してみるような企画って少し考えてみたくなってきました。その時はまた相談させてください。本日はありがとうございました。

 

話を終えて

森田さんが話をされるときの口調はどちらかというと淡々としていて、終始穏やかな雰囲気が漂っている。しかしその話の中身の一つ一つはすごく熱くて、パンを作る上での情熱と信念がかんじられるものばかりだった。

話を聞き終わってみるといつの間にか、なるほど、これだけの思いを込めて作られているからサワムラのバゲットはこれだけ濃厚な味わいが出るのだろうなと、ごく自然にそう感じている自分がいて、製法や材料以外にも大事なものがあることに改めて気が付かされた。

 

(平岩 高弘)

◆ SAWAMURA 沢村

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