Baguette Life バゲットがおいしい バゲットがたのしい 

モンディアル デュ パン2015 (1) Mondail du Pain en 2015

Mondail du Pain モンディアル デュ パン

日本ではあまり知られていないが、「パンのWorld Cup」と呼ばれる大会がある。2年に一度フランスの都市サンテティエンヌで開かれる「Mondial du Pain モンディアル・デュ・パン」だ。フランスはもちろん各国のパン職人の代表が3日間にわたって技術を競い戦う一大イベントだ。

2015年は9月24日から競技が行われ、27日の表彰式で幕を閉じた。

日本からは、シェフ谷口佳典さん(フリアンド 兵庫県西宮市)、コミ篠原遼さん(ZOPF 千葉県松戸市)が代表として選抜され、コーチとして山崎隆二さん(カネカ食品販売)が昨年につづきチームをまとめ引っ張ってこられた。

 

mmmmmm

モンデュアル デュ パン 2015

 

■ 9月24日 初日

大会初日に競技をおこなったのは、スイス、中国、スペイン、ペルーの4カ国。すべてのパンを14時までに完成させ、その後すぐ審査に入る。

 

モンデュアル201509

スイスチームのブースと作品

 

作業時間として許されるのは、まず前日に「仕込み」として1時間。この1時間は原則としてどんな作業をしてもよいとされている。ただし、モンディアル審査対象は完成したパンだけにとどまるわけではない。製パンの過程の作業状況や、清潔さを保つための行為も重要な審査項目となっている。こういったすべての「動き」をすべて含めての1時間なのだ。

 

mmmmmmmm

ずらりと並んだ審査員 一人づつ順番に提出していく

 

仕込みの1時間の作業ののち、翌日は朝の6:30から競技は開始される。そして最後に提出する飾りパンの期限は14:30。8時間ぶっとおしの作業が続くのだ。この期間、作業内容もすべて審査対象として採点されている。

完成したパンのうち作った10種類が特別に審査員に食されることにより評価される。。開場に一列に並んだ9カ国10人審査員に各競技者から1つづパンが手渡されていき、個々に採点されていく。

 

mmmmmmm

イギリスの審査員 マイケル ジャーン シェフ

 

初日の4カ国の選手たちの審査が終了すると、翌日の競技の選手たちの仕込み作業の準備が始まる。

日本チームもブースに入り、最初に各機材の説明を受ける。17時までに用意を整えて仕込みの作業に入らなければならない。

 

mmmmmmmmmm

閉じられたカーテンを開けるところからスタート まだ準備の段階

 

17時から仕込みが始まった。

この1時間で明日の作業内容が大きく左右されれる。たった1時間のことだがその結果が与える影響ははかり知れないほど大きい。予定通りに作業が終わらないことも多いという。最初の10分くらいはかなり緊迫したムード、でも谷口・篠原両選手の手は迷うことなく素早く動いていく。

 

mmmmmmm

山崎コーチ

 

開始して20分ほど経過すると両選手の表情もぐっと落ち着きをみせてきた。特にコミ(アシスタント)の篠原選手の動きが素晴らしい。完全に集中しきっているときに人が見せるオーラが全身から出ているように見える。日本からずっとこのチームをサポートしてきている日本アンバサドール協会の関係者たちからも称賛の声が上がる。

 

mmmmmm

ルメ パトリック シェフ 日本チームの通訳として参加 チームの中でシェフの存在も大きかった

 

山崎コーチや通訳として参加されているパトリックシェフの表情も明るい。谷口さんの動きもスムーズで、大きな問題がおきることなく順調にに作業が進んでいることが伝わってくる。

 

mmmmmmm

左から 谷口シェフ 篠原選手

 

18時までにかたずけを終えて作業を終了させなければならない。多少の余裕をもって赤いカーテンを閉じる二人。すべてをかけて戦う明日への仕込みが無事に完了した。

 

mmmmmmmmmmmm

1時間の仕込み作業が完了しメディアとともにインタビューを受ける谷口シェフと篠原選手

 

■ 9月24日 大会2日目

24日、いよいよ本格的に競技開始。

朝の6:30。合図とともに各国の選手は昨日自らの手で閉めたブースの赤いカーテンを開け、8時間に及ぶ作業を開始する。

 

mmmmmm

4日間の大会の司会を務めた ロジェシェフ

 

2日目のチームは日本に加えてオーストラリアとイタリア。そのほかにコートジボアールも参加予定であったが棄権となっていた。各国とも昨晩に比べて緊張もとれ、いよいよ実力を発揮しつつ製パン作業に没頭していく。

 

mmmmmmm

谷口シェフ 気合い十分

 

選手の作業台のすぐ前を、審査員や大会関係者が自由に動き回りその作業を見つめている。見つめるだけでなく、話しかけたり質問したり、またルールの範囲内でアドバイスもしてくる。国家最優秀職人章と訳されるフランスのMeilleur Ouvrier de France、通称MOFと呼ばれるパンの世界の最高峰の地位を獲得しているシェフだけでも何人も来ており、それ以外に各国の過去の大会の参加者、他国のコーチなどが大会関係者の中にはいっている。

 

mmmmmm

左から山崎コーチ 篠原選手 谷口シェフ 山崎コーチの笑顔が垣間見える

 

こういった人々に見つけられるだけでもかなりのプレッシャーになるのは想像に難くない。見つめられるだけでなく、多くの関係者が各選手の様子を見つめカメラに収めている。情報として持ち帰り、自国のチームの今後のために利用するのだという。各国が他国の技術に注目し情報を欲しているのだ。

 

mmmmmm

オーストリアチーム

 

mmmmm

イタリアチーム

 

6:30から8時間に及ぶ競技も刻々時間が経過していく。8時間もあると、思っていたのだがいつのまにかあまり時間がないという意識に代わっていく。一つの節目となるパンが、バゲット。このパンだけは競技開始から6時間30分後の13:00に提出しなければならないルールになっているのだ。

日本をはじめとして各国がバゲットの提出をにらみつつ、他のパンも作成していく。

 

mmmmmmmm

谷口シェフ バゲットにクープをいれているところ

 

提出するパンは20種類以上にのぼるのだが、それに使う生地は6種類。1つはbiologiqueと呼ばれるbio粉とbio用のイーストを用いたもの。bioとはフランスで定義されている有機栽培の農産物のことを指す。加えて「味覚と栄養」パン用の生地、それとブリオッシュとクロワッサンなどなど。

審査形式は減点法。だからどの生地、どの製パンでも失敗できない。上位入賞そして優勝を目指すには絶対に失敗をしないような管理しつつ、ライバルに差をつけるためのポイントを取りにいかねばならない。そこが厳しい。

 

mmmmmmm

窯だし

 

まるでアスリートのようだ。

作業に没頭している姿が美しい。真剣に打ち込む姿が美しい。

そんな想いがよぎる瞬間。

 

mmmmmmm

分割や成形までこなす篠原選手 作業に迷いはない

 

■ 13:00 バゲット

13:00。

バゲットが提出され、バゲットだけの審査が始まる。選手たちはまだブースで作業を続ける中で、コーチが審査員一人一人にバゲットをプレゼンしていく。

日本のものは、クープ、焼き色ともに最高にきれいなバゲットだ。

 

mmmmmmm

山崎コーチが渾身のバゲットをプレゼンする 奥からじっと見つめるのは台湾チームのコーチ

 

バゲットを提出したあとは14:00までの1時間で飾りパン以外のすべてのパンを提出しなければならない。

お国柄のパン、味覚と栄養のパン、サンドイッチ、ヴィエノワズリー数種類、どれ一つ落とせないパンの仕上げにすべての能力を集中させていく。

 

mmmmmmmm

山崎コーチと確認 このようなコミュニケーションは頻繁に行われる

 

集中

集中

 

mmmmmmmm

ゴールが近い

 

14:00。

日本チームはすべての提出すべきパンが台の上に並べられ14:00を迎えた。

ここから許されるのは飾りパンの作業だけになる。飾りパンはある程度のパーツを事前に作成して会場に持ち込むことが許されている。持ち込んだパーツに追加で開場で作成したものと合わせてくみ上げらていく。そして14:30までに完成させなければならない。

 

mmmmmmmm

組み立て前の飾りパン

 

持ち込み可能だというと楽なように思われるかもしれないが、これが実に困難を極める作業。くみ上げたのちにすぐに採点してもらえるわけではない。全員の採点が終了したのちに崩れる分には原点にならないが、もし一部の審査員が採点する前に一部でも破損してしまうと確実に減点される。

 

mmmmmmmm

飾りパンの作業 観戦している周りも緊迫していた

 

慎重に、慎重にパーツを飴で固めながらくみ上げていく。

コミの篠原選手が抑え役に回り、谷口シェフが確認するように作業を進める。

ちなみにこの飴も、あまり大量に使いすぎて表面から見えてしまうと減点の対象になるらしい。大事をとるのか、あくまで高ポイントを取りに行くのか、各チームの判断によって明暗がわかれることになる。

 

mmmmmmmmm

カーテンを自ら引いてすべて終了

 

■ 完成 審査開始

期限の14:30までに5分以上残っていただろうか、日本チームは飾りパンのくみ上げを終え、提出を果たした。これですべての製パン作業は終了した。あとは片づけをして、カーテンを引けばすべての作業が終了となる。言い換えれば、最後の片づけで忘れ物をすればそこで減点しまうことになる。最後の最後まで気が抜けない。

 

mmmmm

日本チームの飾りパン 「不死鳥」

 

mmmmmmm

オーストラリアの飾りパン

 

イタリアの飾りパン

イタリアの飾りパン

 

すべての競技が終了し、すぐに提出されたパンの審査が始まる。

オーストリア、イタリア、日本の順番でプレゼンテーションが行われる。審査員の審査の様子を役目を終えた選手たちが観客席に座って眺めている。

 

mmmmmmm

審査開始

 

さすがにどのチームのパンも素晴らしい。またパッと見た感じ、今日の3カ国は昨日の4カ国には勝っているような印象が残る。各国のパンに艶といい、造形といい、美しくかつ食欲をそそるものがある。そして谷口シェフのパンはその中でも特に光っていたように思う。

プレゼン後に試食できたサンドイッチの風味には感動した。ポークに生野菜を合わせたそのサンドイッチにはローストしたニンニクの風味がしっかりついていて、黒ゴマのペーストとの絶妙なバランスが素晴らしい。ギリギリまで攻めたという感じが伝わってくる味わいだった。

 

mmmmmmm

谷口シェフの作品

 

 

mmmmmmmmm

谷口シェフの作品 秀逸のサンドイッチ

 

 

mmmmmmmm

谷口シェフの作品 クロワッサンも美しい

 

審査終了後、すべてのパンを別の場所に移して展示する。昨日の4カ国に加えて、オーストラリア、イタリア、そして日本が並んだ。明日はベルギー、台湾、フランス、ブラジルの競技がとりおこなわれ、ここに並ぶことになる。

そして明後日の27日に結果の発表をかねた表彰式が予定されている。

 

mmmmmmm

並べられた作品の前で

 

まずは谷口シェフ、篠原選手と山崎コーチ、本当にお疲れさまでした。そして素晴らしいものを見せていただきましたことにこころから感謝します。

 

(平岩 高弘)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

Post Navigation