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Biencuit MEET UP 2019-ビアンキュイ ミートアップ 2019
文・平岩高弘
ビアンキュイ主催

2019年9月30日。ビアンキュイは初めてとなるパン作りのための会員向けカンファレンス「Bien Cuit MEET UP 2019」を開催しました。

Prologue

MEET UP 2019を
なぜ開催するのか

東京にいる一流のシェフのレッスンを東京の人たちだけでなく、全国のひとに届けたい。そういう想いでビアンキュイのビデオ配信を始めて2年が経ちました。ネットで取得できる修了証プログラムを受講する会員の数も増え始め、ある日、提出された課題のコメントをシェフにいただいているときに、ふと「こんなに熱心な人たちがこんなにたくさんいるんだね。一度なんかであってみたいなぁ。」と言われたことがとても心に残りました。ビデオを見ていただいている会員が増えるたびに、私自身にもそういう気持ちがつもっていたからです。そして何よりもビアンキュイを始めた当初から、ただの「ビデオ配信」サービスでは終わらない、ただ「パンの作り方を教える」サービスを超える何かを目標としていたことが大きかった。誰もやっていない、やろうとしていないサービスを作りたかったから。パン作りを通じてシェフのレッスンを通じて新しい価値を提供できる何かを目指すことをずっと考えてきました。今回MEET UP2019で実現したかったことは、全国の会員の皆さんとシェフが触れ合う機会を作ること、そして会員の皆さん同士が会話し仲間として有意義な時間を共有すること。そこを整理できたとき、キャッチの「新たな技術、新たな知識、新たな刺激がパン作りを変える1日」という言葉が、自分でも驚くほど、あっさりと決まりました。 ふっと頭に浮かんで、これ以外にないな、と何も迷うことなく決まったかんじです。

■遠くから参加していただくためにできること

開催を決心した段階では実は自信もなく、平日に遠方からわざわざ東京まで足をはこんでいただける方が何人いるのだろうかという不安がおおきかったです。みんなで集まって有意義な時間を共有したいといっても、それは主催者側の自己満足的な視点にすぎないのではないか、実際には誰も来ないのではないか、と思ったり。100Kサポートのアイディアもそういう気持ちから生まれたものでした。遠方でビデオを見ていただいている会員の皆様に、少しでも来やすくなる方法はないものだろうか。

遠くから来ていただくのに一番の制約になるのは、移動時間と交通費。先手交通費だけも少しだけでも補助をさせていたこう。そこから東京から100KM以上離れたところから来ていただく方に、交通費の一部をビアンキュイで負担する100Kサポートが生まれました。イベント終了後に「交通費のことを気にかけていただいてうれしかった」というコメントをいただけて、気持ちがとどいたようでとてもうれしかったです。

■満足していただけるコンテンツは何なのか

MEET UP 2019のコンテンツ

イベントでのコンテンツについてもかなり悩みました。一番の課題は、レッスンをするのか、しないのか。製パンに関するイベントでシェフが参加していればレッスンをするのが当たりまえに思えます。でも、それではよくあるシェフのレッスンや展示会のデモと同じになってしまう。それは、MEET UPというイベントにふさわしいのだろうか?考えようによっては、シェフのレッスンはビデオでいつも配信しているわけです。生で見るのとビデオでは違うといえば違いますが、果たしてそれで満足してもらえるのだろうか。ではレッスンを全く外してしまうのか。それはそれでちょっと勇気がいります。結局今回は児玉シェフにレッスンをしていただくことにしたのですが、テーマが斬新だったこともあり、かなり好評でした。ほっとはしましたが、反省点もあり次回以降もいろいろ考えていかねばならないテーマのひとつです。

■ビアンキュイ初の製パンコンテスト BienCuit Cup2019

もう一つ最後まで悩んだのが、ビアンキュイ初の製パンコンテスト、ビアンキュイカップの開催です。もともと、独自のコンテストを行うことは「パンの技術を学び、高める」ためのモチベーションになるという観点から以前から構想していたことではあったのです。でもいざということになると、いろいろと問題点が浮かんできます。コンテストで優勝して有名になりたいという方だけが集まるというイベントになりはしないか。そういう射幸心ばかりあおるようなイベントになってしまっては、何かとても薄っぺらいものになってしまい、少なくとも私はそういう風にはしたくなかった。いろいろ考えていく中で、ビアンキュイというサービスの原点をもう一度確認するような作業になっていきました。

なぜ、ビアンキュイを続けているのか。
「おいしいパンは、人を幸せにする」
「身近な人を幸せにしたいから、パンを焼く」 その原点に立ち返った時に、人を幸せにするための技術を高めあうためのものとして、開催すべきだという気持ちになりました。ですからビアンキュイカップのコンセプトは「普通のパンを普通においしく」です。毎日、普段食べるようなパンを美味しく焼く技術を競い合うのです。高級な食材や個性的なレシピで作るのは自由ですが、そういう点ではほとんど評価されません。コンテンストのためのパンではなく目立ちたいためのパンではなく、身近な人が喜んで食べ続けるパンを見せてもらおう。そこに至った時、あれだけ悩んでいた開催への気持ちが、絶対に開催するべきという覚悟に代わりました。 この二つのコンテンツに対するアプローチがしっかり固まると、そのほかにやるべきものをおのずと見えてきました。成澤シェフや日清製粉の小池氏におねがいすることも、登壇してお話していただく内容も、ごく自然に出てきた感じでした。

Content 1

児玉シェフの
スペシャルレッスン

児玉シェフによるスペシャルレッスン・レスペクチュス・パニス

MEET UP 2019の技術レッスンは児玉シェフによる「RESPECTUS PANIS(レスペクチュス パニス)」のバゲット実演。RESPECTUS PANISとは今フランスで注目されている、小麦粉の力を引き出すための製法。その特徴はミキシングとフロアタイムの取り方にあります。

いかにもフランスらしいというか、いちおう様々な数値が決められているようなのですが実際にはそのあたりはいろいろと意見があるらしく、塩の分量やフロアタイムの時間なども「決まっていない」という話らしいです。要するに、本当に微量のイーストを手ごねで軽くまぜ、18時間程度のフロアタイムを取るというのが大雑把な工程なのですが、もちろんそれだけ知識として詰め込んでもそれでうまくパンが作れるわけではないのはパン作りの常識なわけです。

■もう一つの隠されたテーマ

児玉シェフ

レッスンでは、プロの製パン環境ではなく家庭での環境に適した形に児玉シェフにアレンジしていただいたレシピを紹介しました。そして実際にバゲット生地を焼いていただき、皆さんに試食もしていただきました。
ゲストスピーカーとしてのちほど登壇いただく小池さんのお話にも絡むのですが、実はこのレッスンのバゲットの粉はリスドオルを使っています。そしてそのバゲットは驚くほど甘く、小麦の風味が豊かな味わいでした。会場からも「リスドオルでこんなに甘みと味の濃いバゲットが焼けるなんて!」という驚きの声がたくさん上がっていました。

このレッスンには大きな裏テーマがあったんですよね。それはリスドオルという粉の実力を知っていただくこと。家庭製パンのことをよくご存じないプロの方からするとびっくりするかもしれませんが、一部のたちからはリスドオルという粉は初心者向けで簡単だけどあまりおいしくない粉という風に信じられていたりします。
そんなわけないじゃんと思うかもしれませんが、現実にそういう発言をする家庭製パンの先生歴十何年ですというかたにたくさんお会いしています、わたくし。

レッスンの反省点としては会場のプロジェクターの照度が低く、児玉シェフのレッスンの様子を写したスクリーンがみづらかったこと。途中で私も気が付いたのですが、とにかく参加人数が多いので、立って移動していただくわけにもいかず、いろいろ考えたのですがその場でよい解決策も見つからず、皆さんにストレスを感じさせてしまいました。次回以降の課題として検討したいと思っています。

以前にも書きました通りこの特別なイベントの中で、普段のレッスンのようなコンテンツを加えるのかどうか非常に悩んだのですが、やっぱりやってよかった。やっぱり皆さん、シェフにお会いすれば直接パンについて教えてほしいという想いを持っていられるんですよね。ビデオはいろいろと便利だけど、やっぱりライブの魅力はそれとは別物だということがとてもよくわかったような気がしました。

Content 2

スペシャルランチ

スペシャルビュッフェランチ

ランチは会場で用意する料理に合わせて、ビアンキュイのシェフが準備したパンを一緒に食べていただくことができました。

シェフたちによるパンの数々

料理ももちろんおいしいのですが、やはり人気はシェフのパンへ。根本シェフのカンパーニュ、児玉シェフのロデブ、朝倉シェフのバゲット、川本シェフのコーンブレッド。
どれもおいしく、大好評でした。

Content 3

成澤芽衣シェフ
仏でのパン作りと文化

成澤芽衣シェフ

今回、とてもラッキーなことに成澤芽衣シェフにMEETUP2019にご登壇いただくことができました。成澤シェフは、フランスの2017年バゲットコンクールでフランス人以外の外国人として初、そして女性としても初めての優勝という歴史的な快挙を成し遂げたかたです。
もちろんふだんはフランスで活動されていて日本にはいないのですが、ちょうどこのタイミングで日本に帰省される予定がありMEET UP2019にもご協力をいただける形となりました。
成澤シェフにはゲストスピーカーとして、コンクールに優勝するまでのお話とフランスで外国人としてブーランジェとしての活動を通じてのフランスのパンの文化をお話しいただきました。

■修業時代の話

片言のフランス語しか話せない一人の無名な日本人女性が、フランスにあるパン屋で働くことの大変さはやはり並大抵のものではなく、誰もがするような予想をうわまわる苦労をされたようです。ただ振り返ってみるとそれは日本にも当てはまりそうな話でもあり、成澤シェフのように実力もあり行動力のある外国人の方が日本で働くにあたってどれだけ苦労されているのか、もしかしたら彼女以上に苦労されているのではないかというようなところまで考えさせられてしまい、パンを考えるということは国際的な労働環境や労働者同士の交流にまですそ野がひろがるのかと、改めて文化としてのパンの普遍性に感心してしまいました。パンをまったく食べない国や民族がいくつぐらいあるのかは知りませんが、おそらくかなりの数の民族がパンと呼ばれるものを主食として取り入れているはずであり、パンは音楽やサッカーといったスポーツと同様に、グローバルに価値観を共有できる稀有な食べ物の一つなのでしょう。

■ブーランジェでのパンの売れ方

成澤芽衣シェフのお話の様子

小さなお店でも50から80種類ぐらいのパンを毎日つくる日本に比べて、フランスのブーランジェではそれほど多くの種類のパンは作りません。その中でバゲットだけは別扱いで、大概の店では、トラディション、アンシャンテといった製法からくるものに加えて、その店のシェフの名前をつけたものや、ケシの実などフィリングを加えたものなど何種類ものバゲットを焼いています。

かねがねあれはどういう風に買われていくのだろう、つまり同じ人がその日の気分で毎日違うバゲットを買っていくのか、それともあれだけの種類があっても顧客の一人一人は判で押したように同じものしか買っていかないのかどちらなのかなぁと疑問に思っていたのですが、成澤シェフのお話で長年のその疑問も解けました。答えはビデオで成澤シェフが教えてくれています。

小さい頃から何十年もパンを食べては来ていますが、やはり本場には本場の文化というものがありそれはすべての生活や価値観にもむすびついており、そこまで徹底的に食べこんでいる人たちから比べたら、やはり我々はまだパンのことが良くわかっているわけではないのだなぁという風に感じるのと同時に、そういうわかっていないところをわかるようになっていきたいというワクワクした気持ちを思い起こしていただけたお話を聞かせていただけたとても有意義な時間でした。

Content 4

日清製粉
小池愛衣さん

日清製粉・小池さん

MEET UP 2019のコンセプトである「新たな技術、新たな知識、新たな刺激がパン作りを変える一日」。この中の「新たな知識」に関するところにはこだわりがあって、それはシェフ以外の専門家に来ていただくということ。
一般のパン教室ではどうしてもシェフがシェフの視点での説明をすることになり、それはそれで間違いではないのだけれど、どうしても領域が狭くなる。私たちが普段会うことができない専門家に来ていただいて、シェフとはまた違った切り口でお話をしていただきたいと考えていた。
小池氏は日清製粉でベーカリーを担当して全国の有名シェフのほとんど面識があり、小麦粉の専門家としてご登壇いただくのにまさにうってつけなかたでした。

■小麦粉のスペックと性質

昨今よく話題になる国産の小麦については、それなりに興味を持ち勉強している方も多いと思うのですが、ではそれ以外の部分、例えば日本の製粉技術の話や外国産の小麦の話といった一段視野を広げた話となるとなかなか話題になることも少なくまたご存知方も少ないようなので、そういう点を中心に話をしていただこうと考えていました。

なぜ、同じような成分の小麦粉が何種類もあるのか?またそれを製造できるのか?といったお話から、実は成分表示・分析だけでは小麦粉としての性質は語り切れないというお話から、そこを突き詰めていくと「成分が同じような小麦粉ならレシピ上、同様の扱いをしても大丈夫ですよね?」というビアンキュイでも最も多い質問に対する回答につながってくるお話をしていただきました。

家庭製パンですから、できるだけ手もとの粉を使って無駄なくパンを作りたいという気持ちはわかるのですが、レシピに粉の銘柄まで書いてある理由を考えていただきたいというのがシェフの本音で、「強力粉」と書いてあればそれは強力粉なら何でもよいのでしょうが、よほどバターや卵黄などを大量に使う生地でない限りはそういうレシピに合うこともまずありません。

■リスドオルという粉

リスドオルという粉はとても身近なフランスパン粉です。
お店で売っているフランスパンにも、自宅で作るときのレシピにも使われていることがとても多い代表的な粉です。そしてあまりに身近であるがために、多少誤解もされているのも事実です。
家庭製パンで言えば、「初心者向けの粉」「簡単だけど味があまりしない粉」というイメージで見ている方も少なくないように思います。上級者はリスドオルは使わない、というイメージ。
でも実際にプロの間では全くの逆の評価がされていることをご存知のアマチュアの方は少ないようです。有名店の有名シェフでリスドオルを高く評価し、実際にお店のバゲットに採用している方は非常におおいのです。実力のあるシェフにとって、リスドオルは使いこなしがいのある、力の強い粉というのが共通した評価です。シェフの腕しだいで、様々な風味やうまみを引き出すことができる粉がリスドオル。
今回の児玉シェフのレッスンでも、あえてフランス産の小麦粉ではなく、リスドオルをつかってバゲットを焼いていただきました。
パン作りはホントに道具や高級な材料ではなく、腕で決まるという証拠となっている粉なんですよね。

Content 5

Bien Cuit CUP
2019

Bien Cuit CUP 2019・参加者の作品

BienCuit CUPはビアンキュイが主催する家庭製パンのコンテストです。コンセプトは「普通のパンを、普通に美味しく」。奇をてらったアイディアや高級な食材を使用したアイディアではなく、毎日家族が食べるパンを美味しく焼き上げる技術。この技術を競い合い、刺激しあうコンテストです。課題はイギリスパン。レシピはじゃっかん制約があるもののかなり自由なものにしました。皆さんの自宅で朝食に食べることをイメージして。

■「普通のパンを普通に美味しく」を競う

Bien Cuit CUP 2019 トロフィー

もう何年もパンが流行っていますが、その流行もエスカレートすることによって食べ物としてのパンから徐々に離れてきているように感じます。過度におしゃれさをアピールしたり、うんちくを自慢しあうようなSNSでの投稿が目立ったり。パンがメディアで取り上げられることが増えると同時に、自称専門家のような方やそれを目指している方が目立つようになっていきました。

審査員長・根本シェフ

パンを題材にどう楽しむかは各自の自由ですので、それについてどうこう言う気はありませんが、ビアンキュイはやはりパンの本来の姿である、「毎日のように美味しく食べる」という本質を忘れずに活動していかなければと思っています。

そんな想いをのせて、ビアンキュイカップの開催を決めました。最初に書いたように「普通のパンを、普通に美味しく」。皆さん、どうですか?これいいですよね! 自分でもこのコンセプトは本当に気に入っています。

予選は写真データとレシピを添えてエントリーシートを提出していただき、書類審査です。私が予想を大きく上回るかなりの方にエントリーいただきました。予選を突破した9名の方が本選に進出しました。

入賞者の皆さん

本選では全力で考え、何度も試して完成させたレシピをシェフの前でプレゼンテーションしていただきます。そしてシェフから鋭い質問が返ってきます。そしてその後に別室で厳正な審査が起きおこわれました。

上位入賞者の方々

本選では9名の方全員に入賞の賞状が授与されます。そしていよいよトロフィが与えらる上位3名の方の発表です。ビアンキュイカップ2019の優勝は片倉知美選手、2位は上田恵選手、3位は石井東代選手に決定しました。どちらも火どおりが良くくちどけのよさそうな美味しいイギリスパンでした。おめでとうございます。

Epilogue

MEET UP 2019を
無事終えて

 Bien Cuit MEET UP 2019の様子

以上のような顛末で、何とか無事にMEET UP 2019を開催することができました。細かい反省点を上げればきりがなく、悔いの残るところも多々ありますが、全体的にご参加いただいた皆さんに満足していただけたように思っています。

次回、MEET UP 2020についてはまだ何も決まっていませんが、今回ご参加いただいた方に加えて、残念ながら見送られたかにも次回はお会いできるように、スタッフ一同、いろいろと考えていきたいと思っています。これからもよろしくお願いいたします。

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